日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

MBA留学⑧ バブソン Japan Trek (東京編)

バブソン Japan Trekとは 

バブソンでは、毎年夏の時期に2週間程日本を訪れ、entreprenershipに関連する企業や官公庁などを訪れて、日本のentreprenershipについて学ぶという授業があります。2016年は、東京、名古屋、京都、熱海を訪れる内容でした。参加定員は15名ですが、毎年その4倍以上の申し込みが来る超人気授業です。バブソンの日本人教授である、山川教授が引率されます。私は、2016年にTA(ティーチングアシスタント)として参加しました。

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(最終日のアルムナイも交えたディナー)

TAの仕事

TAの仕事は、主にaftre 5の企画です。多くの参加者の外国人にとって、日本は初めての訪問なので日本の文化がしっかり伝わるように、レストランや訪問場所などを企画することです。しかし、実際は日本ではあまりに英語が通じないことが多く、通訳としての仕事も結構多かったです。外国人と一緒に日本を見ることで、今まで気づかなかった日本の良いところと悪いところが良くわかりとても貴重な機会となりました。

ハイライト

私が京都が好きだということもありますが、参加者の最も満足度の高かったのが京都でした。観光という意味だけでなく、創業数百年を超える企業がたくさん存在しており、そうした企業の経営哲学に外国人の生徒達は深く感じいっていました。 

東京での企業/官公庁訪問(一部紹介)

経済産業省

アメリカと比較すると良く思うのが、日本の官公庁はとても良く取り組まれているという印象です。資金などをはじめとした支援制度などバックアップはかなり揃っています。日本の問題は起業をするプレイヤーの数が少ないです。

2014年、1,440万人ものアメリカ人が独立して働いている。これは米国における労働者人口の6.6%にあたる

出典 Babson College

 

2012年、日本での起業者は、22.3万人。労働人口が6400万人ほどなので、労働人口の約0.4%。

出典 中小企業白書、厚生労働省

 

圧倒的に少ないです。この大きな理由は、社会の起業に対する寛容さではないかと思います。アメリカであると、起業家に対する憧れは大きく、同じ商品があれば起業家が携わっている商品を選択をする消費者が多いというのが事実です。一方で、日本の場合、起業家は変わっている人、という印象が強く、商品を選択をする場合も安心感から日本の大企業が携わる商品を選択することが多いと思います。こうした大企業主義の実情に、外国人はとても不思議そうでした。また、失敗した起業家に対する寛容さも大きな違いと思います。アメリカであれば起業の失敗は、経験として寧ろ評価されますが、日本の場合は自己破産した場合、もう一度代表者になること自体も難しいのが実態です。

サムライインキュベート

www.samurai-incubate.asia

サムライインキュベートは、日本では品川の近くにあり、起業家に対して直接投資をするとともに、co-workingスペースを提供しており、多数の起業化が品川のオフィスで働いております。2名の起業家に話を伺いましたが、ビジネスへの考え方やスタンスなど、国籍を問わず起業家に共通するものがあり、外国人生徒達も積極的に議論を交わしてました。

東京でのアフター5 (一部)

ロボットレストラン 

 Tripadvidorを見ると上位にあるのもあり、外国人生徒からの要望でロボットレストランに全員で行ってまいりました。1日複数回の講演があるのですが、1回は100人が定員で、毎回満席です。殆どが外国人観光客で私たちの回は、私以外はすべて外国人でした。音楽と光とロボット(リモコン式)が奏でるshowです。外国人の反応は人によってまちまちでしたが、このぶっ飛んだ演出を"clazy"だと言って楽しんでいる人達が多かったです。説明も商品の販売も英語で実施されており、演者のキレも含めてとても訓練されている印象を受けました。私も良い経験になりました。

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ゴールデン街

”ローカルな新宿が見たい”という要望をうけ、ゴールデン街に行きました。1つのバーを貸切状態にできたので、そこで楽しく飲み明かしました。途中日本のテレビ番組の撮影を受けたりと。(外国人観光客に取材するもの)

彼らは本当にお酒が強いので、私は1時間くらいで帰りましたが、その後朝方まで飲み明かしたようです。このゴールデン街の持つ独特の雰囲気を大変気に入ってくれてました。店主曰く、最近はゴールデン街にも外国人観光客が増えてきているようです。

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秋葉原 

 希望者を募って秋葉原に行きました。主に男性でしたので、ラジオ会館に訪れました。ご存じのとおり、日本の漫画やアニメは想像以上に世界に広まっていて皆しっているため、そのフィギュアには感動して購入したり、友人へのお土産に購入していたりと好評でした。ラジオ会館にはアニメ漫画以外にも、旧車のプラモデルなどを多数扱う店舗もあり、自動車好きのアメリカ人はずっと興奮してみてました。 

www.akihabara-radiokaikan.co.jp

 

感じたこと 

東京は広く、あまりにも見るものが多いので、観光を紹介して案内することがとても難しかったです。世界最大の人口を持つ東京大都市圏。この効率的な都市に魅入られている外国人が多く、英語や会計など部分をクリアしていけば、今ある東京のコンテンツで外国人を魅了していくことはもっともっとできる、と感じました。特に欧米の方に多いのは、ローカルのものや、他の観光客があまり行かないような場所での体験にとても価値を感じるということです。日本の持つ歴史、文化の独自性はそうした好奇心を満たしてやまないです。語学の壁さえなければ、きっとどんなお店でも外国人観光客を魅了することができるのではないでしょうか。

会計

どこのお店でも日本の現金主義に困りました。海外だと現金を使用することはほとんどなく、割り勘もカードで勝手に実施してくれたり、送金アプリが普及してたりするので、会計時がとてもスムーズなのです。日本にいる時は気にならなかったですが、いちいち現金を顧客側が割り勘するのはとても手間でした。。また、多くのお店がまだまだ英語対応は無く、自分達だけで行ったお店で苦労している外国人は多かったですが、どこでも美味しいその味のクオリティには感動してました。

交通

綺麗で正確な日本の鉄道は、心底全員感動してました。Suicaなどの日本独自の仕組みに最初は手間取ってましたが、それ以降正確で英語表記もあるので、皆自由自在に東京を行き来できていて楽しそうでした。

(C)2016 daikimatcha

 

 

南米コロンビアへ 2016年8月

コロンビアに行こうと考えたきっかけ

親戚がかつてコロンビアで働いていたことがあったが、当時「誘拐されて危険だから、絶対行ってはいけない」きつく言われていた。しかし、その親戚は本当にコロンビアが気に入り、死ぬときまでコロンビアにいたため、いつかいってみたいと思うようになった。Babson Collegeに行くことになり、コロンビア人の友人もでき、現地の詳細な紹介をしてもらえる状況ができたこと、情報収集する中で、過去に比べて随分と治安が改善したらしい、ということを聞き、行くことに決めた。 

コロンビアの基本情報

コロンビアは、人口4,700万人を抱え、南米ではブラジルに次いで2位。(Wikipediaより)1人あたりGDPは、2016年で5,194USD(世界経済のネタ帳)※日本の1人あたりGDPは2016年で34,870USD(世界経済のネタ帳)。南米ではウルグアイ、チリ、ブラジルに次ぐ。

産業では、珈琲、エメラルド、バラなどの産業が有名。

珈琲の生産量は2013年で、ブラジル、ベトナム、インドネシアに次いで4位。(グローバルノートより)

エメラルドの生産量は2000年で、世界の60%を占めて首位。(Wikipediaより)

バラの輸出額は2015年で、世界3位を占める。(Growより)

観光の印象(首都:ボゴタ)

ボゴタは、赤道に近い場所にあるが、標高2500m以上の場所に位置するため、日本の秋のような気候が年中続く。人口は800万人を越す大都市だ。 

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(モンセラーテの丘よりボゴタ市内の一望)

ボゴタは、東側に山が連なっており、ざっくりいうと、北側が新しくて発展しており安全な場所、南側がスラムなどがある場所です。コロンビアの友人には、「迷ったらとにかく北にいけ」と言われました。 

特にParque De La 93のあたりは、治安が良く、夜でもオシャレなバーやレストランが多いため、友人からはこの当たりで宿をとることを勧められ、実際に泊まりました。

イメージでいうと、六本木界隈のような感じでしょうか。実際に行ってみて、夜でもとても治安の良い印象でした。中心部も昼間はとても治安は良かったです(夜は現地の人でも17時以降はあまり歩かない、といっていましたが) 

訪れた場所

ボゴタにしか滞在できませんでしたが、市内ではいろいろ廻ったのでそちらをご紹介。

エメラルドミュージアム 

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(ミュージアム内にあるエメラルドの鉱脈)

ボゴタの中心部にあるエメラルドミュージアム。150yen程度で、英語orスぺイン語でのガイド付きでみることができます。ミュージアムは、エメラルドの鉱山の洞窟を再現した作りになっており、いくつかのエメラルド鉱石のパターンを見ながら説明してくれます。その後、数々の高級エメラルドを他の国のエメラルドとの比較付きで紹介してくれます(この部分は写真NGでした) 

ゴールドミュージアム

こちらもエメラルドミュージアムからすぐの場所にあります。ゴールドミュージアムは、コロンビアの持つ長い歴史を金にまつわる展示物とともに掲示されています。インカ帝国など数千年にわたる歴史の解説が丁寧にされております。 

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カテドラル 

ボゴタには、スペイン統治時代に作られたたくさんの教会(カテドラル)が今も美しく残っています。スペインが治めていた国には、どこにもこうした綺麗な教会があるので、その影響力の強さにはいつも感嘆します。 

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ボテロミュージアム

こちらには、コロンビアの有名な画家フェルナンドボテロの作品やそのコレクションが展示されております。無料です。非常に特徴的な絵で、すべて丸みを帯びています。とても印象に残る作品が多く、思わず見入ってしまいました。 

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(ボテロが描いた、モナリザ)

食事 

やはり、珈琲は本当に美味しいです。現地の方に美味しい珈琲店を二軒紹介して貰って行ってきました。どれも新鮮でひきたてなので香が良く最高でした。産地ごとに豆の特徴が異なっており、その解説が解かり易くされていたのも面白かったです。

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コロンビアは、こうしたスープ料理が結構多いです。豆やイモ類が中に入っています。味付けはシンプルで日本人の舌にも合うので、私はコロンビア食を満喫しました。また、肉の産地でもあるので、雄大な大地で育てられた牛肉も美味しいと評判です。

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最後に

今回一番の感想は、想像とずいぶん違って、安全で楽しい国ということでした。日本にいると遠すぎてあまりに馴染みがないのですが、昨今の政府による治安改善の取り組みなどから、アメリカなどからは多くの観光客が訪れます。コロンビアは太平洋とカリブ海どちらにも面しており、それぞれのビーチリゾートがあるほか、東はアマゾンに面する、実に多様な環境を持った国です。是非皆様も、リサーチの上、訪れてみては如何でしょうか。

(C)2016 daikimatcha

 

経営再建⑯ ~裁判出廷(後編)~

弁護士との相談 

2回目の訴訟に際しても、新会社としては、絶対に負けられないし最後まで闘い抜く必要があった。
われわれは、買収時に純資産以上の金額で新会社を買収したのであり、旧会社の債務を負うのであればその分ディスカウントした価額で買収していただろう。我々が支払った買収金額を、正当に債権者間で分けて頂きたい、という想いだった。
絶対勝つため、親会社のI社長と相談して、新たに実績にある弁護士さんに話をして、請け負ってもらうことにした。
裁判を行ううえで、代表取締役社長であった私は被告人当たるので、私自身も法律を理解する必要があったし、我々の法律的根拠をサポートするfactを揃えるのも私の役目だった。
裁判は、事象に対して、拠り所となる法律的根拠を選び、その根拠をfact(契約書など)でサポートする、というロジカルな組み立てが要求される。ある種、戦略コンサルの仕事に似ている部分が多いなとも感じた。弁護士と一緒にロジカルにストーリーを組み立てていくため、弁護士との相性の良さも大事だと感じた。
訴えられているという事実自体は決して喜べる事実では無かったが、幸いにして弁護士さんとの相性は良く、裁判の準備は順調に行うことができた。
 

訴訟の取下げ 

2013年夏頃、東京地方裁判所に出廷した。
裁判所の部屋ごとにその一日の裁判スケジュールが書かれていて、見ることができる。
1つの部屋でも、1日に何件も裁判が行われていた。こんなに裁判があるのかと驚いたものだった。
想像しているよりも機械的に裁判は始まり、裁判官が坦々と仕切っていく。殆ど被告側・原告側の弁護士と裁判官との間でやり取りが進んでいく。
我々が旧会社の経営陣とは一切の関わりがないこと、正当にコンペに参加して、純資産以上の金額で買収を行ったこと、従業員の未払い給与などを引き継いだこと、国税に敷金を差押えられてしまったこと、全てが原告側にとっては初耳のようで、非常に驚いているのが印象的だった。被告側からの事情の説明をうけ、裁判官がこれらを精査して数か月先に改めて裁判を行う、ということになった。30分弱であっという間に終わった。論拠が同じことから、他の原告(債権者)に対しても当該決定事項が裁判所の方から連絡が行く、とのことだった。 
その後、1月程経ち、全債権者から訴訟の取下げ通知が届いた。
事実が伝わり、我々が善意の事業引継者ということが判明した結果、訴訟を起こす理由も勝てる見込みも無いという判断だった。訴訟取り下げに安堵はしたが、旧会社の不誠実な対応のせいで、我々の貴重な時間・資金・精神的労力を使用することになった事実に改めて憤りを覚えた。 
 

誠実であること

この旧会社に関連する裁判を経て私が強く感じたことは、人として誠実であることの重要さだった。
非常に苦しい旧会社の経営状況が、旧会社の代表者、経営者たちの、人としての理性を失わせたのだろうか。
 
会社の経営はつまるところ、個人の人間性に行きつくように感じた。
非常に苦しいとき、どうしようもなくつらいとき、人としての弱さに流れてしまうかどうか。
苦しいときも好調な時も、どんな時も、顧客・従業員・取引先・債権者・社会に対して、誠実に、真摯に向き合わなければならない。人として恥ずべき行為はしてはならないし、人としての誇りやプライドのようなものを捨ててはならないと思う。
それが健全な経営を行っていくために必要な「信用」を築くことにつながるし、それを失ってしまったらそもそも人として幸せな人生は得られないのではないか。
 
今まで生きてきた中で、私は幸いにして誠実な人々に囲まれて暮らしてきたのだと思う。そのため、自分では理解できないような人間性を持つ人々に身近に接する場は無かった。
経営に携わるようになり今回の事件を経て、経営というものの怖さと、人として誠実であることの重要性を意識するようになったのだった。
(C)2016 daikimatcha

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経営再建⑮ ~裁判出廷(前編)~

2度目の訴訟

会社を経営している間に2度も訴えられることになるとは思ってなかった。
前回は、国税から旧会社への差押え通知であり、国税と当社で旧会社の資産を巡り争ったのだったが、今回は、旧会社の複数の債権者達が、我々新会社を訴えてきた。
もちろん我々は法を犯してなどいない。旧会社の債権者に対する不誠実が招いたことだった。
2度にわたる裁判を経験し、私は人として誠実であることの重要さを強く認識した。
 

詐害行為

民法424条の詐害行為取消権を根拠として、債権者は新会社を訴えてきた。
詐害行為取消権とは、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。」wikipediaからの引用だ。
簡単に言うと、旧会社の債権者は、我々新会社と旧会社がグルになり、意図的に資産部分だけを新会社へと切り分け、新会社が不当な利益を得ている、と主張していた。
後から解ったことだが、債権者は訴訟を起こした時点で、旧会社から全く説明を受けていなかったため、新会社設立の経緯も理解していなかった。
彼らは自分たちの債権(多くは売掛金だったと記憶している)を回収しようと思ったところ、いつの間にか売掛先である旧会社からは資産がほとんどなくなり、その代わり新会社がブランドを継承していた。
債務の返済を拒否するために、旧会社の資産を外出ししたと誤解し、新会社に対して法的アクションを取ってきたのだった。われわれも旧会社が債権者たちにそのような対応を取っているとは知らず、訴訟状を受け取り、非常に困惑した。
その中の1つの訴訟は、旧会社の代表個人に対する怨みを示唆する強烈な内容であったことは今でも忘れられない。
これらは、旧会社の誠実さに欠ける対応が原因だった。債権を返せないこと自体あってはならないと思うが、それ以上に誠実な説明や、謝罪が一切ないことは、人としてあってはならない。
 

破産手続き 

会社を破綻させるには、実は種類とステップがある。倒産手続は,破産手続・民事再生手続・会社更生手続・会社手続など倒産処理に関連する各種手続に分類される。
 
記憶に新しいJALの破産の場合は、会社更生手続きである。会社更生法1条によると、会社更生手続は「窮境にある株式会社について,更生計画の策定及びその遂行に関する手続を定めること等により,債権者,株主その他の利害関係人の利害を適切に調整し,もって当該株式会社の事業の維持更生を図る」ことを目的とする法的整理手続だ。倒産によって社会的に影響を及ぼすような大規模企業の経済的更生を目的とする手続である。
 
一方で、今回旧会社が取った方法は、旧会社は破産手続で倒産させ、その後、連帯保証を行っている旧会社の代表取締役が自己破産をするというものだった。
破産手続を開始するには、まず「債権者」「債務者」「法人の理事」「会社の取締役」「会社の業務執行社員」などが裁判所に対して、破産手続開始を申し立て(破産法18条、19条)、始めて破産手続きが開始される。
破産手続きが開始されれば、破産管財人という弁護士が認定され、この弁護士が倒産予定の会社の資産や負債、詐害性などを精査して、残った資産の分配を債権者に対して行う。詐害性があり倒産が悪質だと判断されると、自己破産できないケースもあるようだ。
しかし、その当時、旧会社に何が起きていたのかは不明だが、新会社引き継ぎから半年経ってもなお、旧会社は破産手続きを経ずに未だ存在していた。
旧会社がブランドを売却したことで得た現金がどの程度債務返済に充てられたのかは全くわからないが、現に訴訟を起こした複数の債権者への債務返済はなされていなかった。また、旧会社は破産手続きを行っていなかったため、そういった債権者への資産の分配も始まらない。債権者にしてみれば、何の説明もなく、期限を過ぎても多額の債権を回収できず、大きな怒りを覚えるのも無理はないのだった。
 
この後、弁護士とともにどう対応するか検討していくこととなる。
(C)2016 daikimatcha

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経営再建⑭ ~販売施策の失敗(後編)~

売上施策の結果 

商品サイズ・価格の変更によって、お客様が挙げていた不満を2つも解消できた、と私は思っていた。
しかし、商品のサイズ変更は大失敗だった。
理由は2つ。第一に、サイズが小さくなり、25%安くなったとしても競合他社に比べれば依然として割高であり、新たな顧客層を獲得できるほど魅力がなかったこと。
第二に、今までいたコアなファン層を失ってしまったことだ。サイズを小さくしたことで以前よりも食感が悪くなってしまい、コアなファンを失望させてしまった。試食をした出来たての商品ではなかなか気づきにくかったが、従前の大きいサイズによりも乾燥し易くなっており、時間が経つと食感が固くなりやすくなっていた。加えて、従来の大きさにバリューを感じていたお客様がいた、ということを完全に見失っていた。
1口サイズの新商品投入による売上増の効果はそこそこあったものの、商品のサイズダウンと商品単価を下げたことが悪い方向へと響き、さらに売上は下降を辿っていく。
 

誰の声を聴くべきか

商品サイズと価格変更時の学びは大変大きかった。
お客様の声を聞くことは経営に欠かせない作業だが、「誰の声を聞くべきか」という視点が重要だ。
様々な顧客層のお客様がいらっしゃる中で、どういったお客様が、自分のブランドの支持者、適切なターゲット層となりうるかを見極める必要がある。
その上で、お客様から上がってくるご意見が、ターゲット層のお客様のものなのかどうかを見極め、取捨選択を行わなければならない。簡単なようで、顧客に対する理解と洞察力が求められる思った以上に難しい作業だ。
特にニッチなブランドには、コアなファンがついており、そうしたファンが極めて大事だ。コアファンで無い顧客層をやみくもに狙いにいこうとすると、結果として売上の基盤を形成するコアファンの求める価値を損なってしまい、ブランドとして致命的な結果をもたらすことがある。
 

出店場所による施策の制限 

当時、出店していた店舗の全てが一様に低迷していたわけでは無く、中には比較的持ちこたえている店もあった。それは、カフェ店舗だった。
店舗の種類は、大きく分けて、物販店舗とカフェ(軽飲食)店舗の2種類にわけられる。店舗設備に応じて、保健所から物販かカフェのどちらの許可を得られるかが決まる。
カフェ店舗の場合、飲み物を取り扱うことができるため、菓子の売上が落ち込む夏の暑い時期に、飲料売上が売上を下支えしてくれていた。夏の需要を喚起できる新規ドリンクも導入することで店舗の見た目の涼しさも演出することができた。
一方で、物件によってはどのように追加投資をしても、物販店舗以外の許可が物理的に得られない立地もあり、その店舗においてはそういった有効な策を講じることはできなかった。落ちていく売上に指をくわえてまつことしかできない。
出店時に、「通行量」以外に、「販売できる商品・サービスの種類・制約」という重要な基準を見落としてしまっていた。講じることができる打ち手の数・種類が少なければ、経営改善の余地がなくなってしまう。
 

顧客層のミスマッチ 

10店舗弱新規出店した中で、上手くいったのは「比較的通行量があり」「メイン顧客の女性20代~40代が多く」「比較的所得の高いエリアor比較的所得の高い人が一定以上通るエリア」だった。
ショッピングセンターに出店したケースでは、顧客層の求める価格帯と商品ブランドは異なり、売上は芳しくなかった。
また、競合がいない場所に展開しようと、オフィスビルに出店し、コーヒー・菓子のテイクアウトを狙った店舗もあった。しかし、そもそもオフィスにブランド菓子の需要はなかったし、コーヒーで推すには他に競合もいる。ここも厳しい闘いとなった。結果、3店舗はすぐに退店をすることになる。 
 
国税差押えによって全店を失った後、怒涛の出店で売上規模を一時的に保ったものの、根本的なリピート率の低さが顕在化し、売上は低迷した。さらにサイズダウンによりコアファンを失い、単価が低くなったことで売上はさらに低迷するという悲しい結果となった。こうした、経営の迷走を見て、この時期に自ら去っていった社員も何名かいた。何をしてもうまくいかない。本当に苦しい時期だった。 
 
そんな時、訴訟通知を再度受け取ることになる。相手は、旧会社の債権者だった。
(C)2016 daikimatcha

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経営再建⑬ ~販売施策の失敗(前編)~

売上を向上させるというのは、思った以上に非常に難しいものだった。自分で良かれと思って行った施策も裏目に出ることもある。以下は、自分が行った施策の中でも、学びの大きかったものの一つだ。

 

新規店舗の売上 

一斉に出店を行ったのち、どこの店舗も初月は快調だった。予算も大きく超え、発注数が足りなくてデベロッパーから怒られるなど、嬉しい限りだった。
しかし、翌月5月も後半にさしかかったころには売上が落ち始めた。最初は、気温の上昇による低下(菓子はアイスなどを除き、熱い時には売上が下がり寒い時には売上が上がる季節商品)、あるいは開店景気が終わっただけだろうと考えていた。しかし、6月に入り梅雨に入っても売上の低下が一向におさまらない。ついに予算で組んでいた売上を下回り、損益分岐をも下回り始めた。
出店は決して成功とはいえなかった。売上向上策の実施を急ぐこととなる。
 

リピート率の低さ

顧客の動向を観察していると、リピート率の低さが売上低迷の原因であることは自明だった。
そもそも買収前に当該ブランドの経営が傾いた根本的な原因がリピート率の低さによる既存店売上の減少にあるということは、買収時点でもある程度認識していた。当初のプランでは、全社のコスト削減を行った後に、既存店の売上向上施策に腰を据えて取り組む予定だった。
しかし、既存店舗がすべて無くなり、急いで発掘してきた新規立地に出店したため、店舗の立地条件は従前よりも悪化していた。そうなると、リピート率の低さに起因する売上への悪影響が前よりも顕著に表れてきたのだった。
 
ともかく出店した以上は、一刻も早く手を売って売上を回復させ、損益分岐を超えなければならない。
社員と売上低迷の原因について議論を交わしても、判然とした答えは出てこなかった。社員自身がお客様のことを理解できていなかったとも言える。
そこで、リピート率を上げ、売上向上施策を立案するためのヒントを得るため、お客様へのアンケートを実施することにした。
 

お客様へのアンケート

お客様に実施したアンケートの回答で共通していたのは、「高すぎる」、「甘すぎる」、「大きすぎる」といったメッセージだった。このアンケートを元にその後、売上施策を幾つか考えていくことになる。
お客様の意見は非常に大切だ。その意見の中に、経営を改善するヒントがちりばめられている。しかし、その意見を短絡的にそのまま聞き入れることが、正しい経営判断に繋がるとは限らない。
 

売上施策~サイズ・価格の変更~ 

私個人の意見としても、競合と比較して値段が高すぎると感じていた。NYの店舗では高い値段で販売されているのだが、日本の小売業は、競合が多く、安くてそれなりの品質で商品を提供するブランドがたくさんある。競合との比較でお客様が割高に感じてしまうのも無理はなかった。
消費の価格を変更するとき、非常に慎重な判断が求められる。
当該会社の場合、現状で商品あたりの利益がでていないのにも関わらず、単純な値引きをすると、利益率の低下を招くだけでなく、お客様にとっても「材料を悪くしたのではないか?手を抜いたのではないか?」とブランドしての信頼を落としかねないリスクがあった。
そこで考えたのが、サイズを小さくしてその分値段を25%程度低下させるという施策だ。商品の単価は低くなるが、その分買いやすさが増し、お客様1人あたりが買う個数が増えて結果として売上が向上することを狙っての改良だった。
加えて、NYで売られていたが、日本では未だ販売していなかった新商品を投入することにした。新商品についてもNYよりもさらに小さい商品規格へと変更し、日本人にあうようにカスタマイズした。特に主要顧客であった20代~40代の女性に対して、1口サイズで様々な種類を御客様が楽しめるような商品展開を実施した。
製造委託先に対してもこの件を了承してもらい、メディアへのプレスも活用したうえでプロモーションを展開した。 
私としては、お客様が挙げていた不満「高すぎる」「大きすぎる」という2つの不満を解消したので、これは大いに期待ができると意気込んだ。
 
(C)2016 daikimatcha

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MBA留学⑦ ~日本の英語教育への危機感、英語力の向上法(後編)~

同じ日本人でも私より英語の出来る人は沢山いると思うが、私がやって良かったと思うことについて共有できたらと思う。
英語を学ぶうえで大事なのは、継続して量をこなすということと、それを楽しみながら続ける、という当たり前のことを実行することだと思う。 

TOEFLとTOEIC 

海外の大学院や大学に入る場合、TOEFLという英語のテストを受けることになる。TOEFL(iBT)は、Reading, Listening, Speaking, Writingの4セクションから構成され、受験時間が4時間にも及ぶテストである。アメリカの上位MBAを受ける場合、各セクション30点満点の合計120点満点中、100点が足切りのラインとなる。Harvard MBAでは足切りが109点だ。 私の場合、留学前に5ヵ月間TOEFLの勉強をして、102点(Reading23, Listning28, Speaking26, Writing25)というスコアを取った。留学を真剣に検討される方は、もっと前から準備を行うことを強くオススメする。

ちなみに、このTOEFLであるが、日本人「受験者」の平均点は、71点であり、アジア31国中下から数えて5番目である。上位の国はオランダが100点、シンガポールが97点で、その他スウェーデンなどの北欧諸国が95点前後と高得点である。日本の71点というのは、留学を視野にいれて高額の受験料を払って受けている人の平均点なので、日本人全体の平均はもっと低いと思われる。
私も、MBA留学を考えてから初めてTOEFLを受けたが、そのときの感想は、「もう二度とうけたくない、、難しい、、長い、、」であった。TOEFLはTOEICと比べて極めて実践的で、英語力を総合的に判断する優れた試験だ。TOEICとTOEFLの対比はネットなどでもたくさんでているが、私はTOEICで915点という得点を取っていたが、最初に受けたTOEFLは75点だった。TOEICよりはるかに難しいのがTOEFLであり、そのTOEFLで非英語圏の外国人は日本人より遥かに高い点を取っている。

Listening~ NHKラジオ講座、好きな海外の番組・映画を見る~

私の場合、英語のリスニングが中学生の時からとても得意だった。それを紐とくと、中学時代に父親にすすめられて始めたNHKのラジオ講座を真面目に毎日やっていたこと、WWF(現在、WWE、アメリカのプロレス団体)が好きでかなりテレビ番組を英語で聞いていたことが良かったのではないかと思う。
NHKラジオ講座は安い上に内容も秀逸で、複数の講座を毎日受講したことでかなり耳を鍛えることができた。やはりリスニングは毎日やることと「集中して」量をこなすことが必要だと思う。非英語圏で耳の良いMBAの学生と話していて思うのは、彼らは、幼い時から英語圏のテレビや映画が大好きで良く見ており、アメリカ人とその内容で盛り上がるくらい良く知っている(日本人で言うと、日本人同士でスラムダンクやドラゴンボールの懐かしい話をするような感覚で、アメリカ人と非英語圏の学生たちがアメリカのアニメやコメディの話題で盛り上がっている)。好きなものを集中して英語で聞いているため、耳がかなり鍛えられているのだと思う。自分でやってみても思うが、字幕無しで英語の映画やテレビを見ると力が付く。  

Speaking ~オンライン英会話~

Speakingを向上させるにはとにかく量をこなすことが大事だ。最初のうちは、文法や発音がめちゃくちゃでも、とにかく文章を話そう、つなげようとしていくなかで、すらすらと出てくるようになる。日本人にありがちな、文法や単語を間違って恥ずかしい思いをしたくない、といったシャイなスタンスではスキルが向上しない。間違いを恐れずとにかく話すことだ。
従前私も通っていたが、英会話スクールは時間あたりの費用が高く、英語力を伸ばすにはお金がとてもかかって、気軽に量をこなすことが難しい。日本にいて量をこなすのならば、オンライン英会話サービスのRarejobは素晴らしいサービスだと思う。
 
かなりサービスの初期から使用させて頂いているが、値段が大変リーズナブルだ。月5,000yenくらいで毎日30分は喋ることができる。授業内容も自分で決めることができるので使い勝手がよい。フィリピンの優秀な大学生と話すことができるので、会話の内容自体も面白い。また、発音の教材もあるので、その教材に沿ってレッスンを行う中で、日本の学校では教えてくれないような顎・口・舌の使い方を知ることもできる。rarejob創業者の日本人の英語力を向上させたい、という熱意http://ameblo.jp/netpipeline/ と、skypeを用いた素晴らしいビジネスモデルで、このようなサービスを提供しているRarejobには本当に脱帽だ。
現在は、rarejob意外にも多くのオンライン英会話サービスがあると思うので、いくつか比較して自分に合うプランを提供しているサービスを選ぶのも良いかもしれない。

Reading~海外のメディアに触れる~

何段階かあると思うのだが、まずは最低限の単語力が必要だ。私がTOEFLのスコアがイマイチ伸び悩んだ要因のひとつは、単語を覚えるのが大嫌いだったことも関係していると思う。その上で、economistやnewyork timesなど海外の記事を習慣的に読むと良いと思う。最初は英語を読むことが面倒だと思っていたが、興味深い情報を得られると読むのが楽しくなる。私も、バブソンMBAで大量のケース教材を読む中で、ある時期から英語を読む面倒さに対して得られる情報の興味が勝り、読むスピードが速くなったと思う。

Writing ~ネイティブに添削してもらうのがベスト~

日本人は英語教育の中で、文法についてはある程度しっかり身に着くので、あとは英語としてナチュラルな表現をできるようになることが必要だ。一番力が付くのは、自分が書いた内容をnativeに添削してもらう方法だと思う。私の場合、グループプロジェクトで率先して文章を書き、それをnativeのチームメイトに直して貰った時、よりnaturalな言い回しなどを学ぶことが多い。例えば、簡単な例だと、~ついて、と書く時about~と書いていたのをRegarding with~と直して貰ったように。自分で文章を書くと、outputの速度は早くなるし、自分で書いた文章に赤が入るので直し方にも注意がいくので、良いと思う。 

英語での情報収集 

英語で情報収集するようになると、得られる情報量や多角的な示唆など恩恵は非常に大きいと思う。例えば、economistなどの記事ひとつとっても日本のメディアではあまり取り上げられないような地域の情報も手に入るし、日本がどう海外から見られているかもわかる。クラウドファンディングサイトのkickstarter https://www.kickstarter.com/?ref=navを定期的にみるだけでも新しい商品アイデアなどが見れて面白い。
 
同じ事象でもメディアによって取り上げかたが異なって興味深かった例をあげると、セブンイレブンの鈴木会長が退任した際の記事だ。WSJは、ファンドの視点・立場から記事で書かれているし http://www.wsj.com/articles/7-eleven-chief-resigns-as-hedge-fund-prevails-in-japan-boardroom-fight-1460019140、Fortuneは鈴木会長の引き際の潔さ良さに焦点を当てて記事を書いている、http://fortune.com/2016/04/07/7-eleven-ceo-resignation/?xid=soc_socialflow_facebook_FORTUNE
日経新聞の場合、http://www.nikkei.com/article/DGXLZO99416500X00C16A4TJC000/創業家の影響力の話が中心となっている。興味のある記事の場合、複数メディアを調べるとより事象に対して多角的な視野で捉えることができる。
海外でしか無いsoft wareなどにもアクセスができるようになるし、仕事の能率を高める機会が増えると実感している。 
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