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日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

経営再建⑦ ~既存店売上施策(前編)~

経営再建
コスト削減は、即効性が高く成果がすぐ明らかになったのに対して、既存店売上の向上は直ぐにはうまくいかなかった。
最初に実施した売上向施策は失敗ばかりだが、その理由の振り返りも兼ねて記載したいと思う。
 

新規商品開発

当時商品開発は、販売の店舗責任者が発案→OEM会社と折衝→試作作成→最終決定というプロセスで行っていた。ほぼ毎月新商品を発売し、そのプロモーションを行っていたので、常に新規商品のパイプラインが走っているようなイメージだ。
製菓は嗜好品なので目新しさが無いと直ぐに飽きられてしまう。商品開発は大変重要なプロセスだった。過去の販売データを見ると、主要カテゴリーの商品の売上は各店で年々下がっており、その主な原因が過去の商品の焼き増しの多さにあるのではないかと考えた。せっかくデータはとっていたものの、データをや他社の研究、NYの商品など様々な情報を基に商品が起案されているわけではなかった。そこで、新たに特徴を加えるべく、親会社であるIT会社の製菓部門に協力して貰いアイデアだしを実施し、今までにない新鮮な商品を提供していくことにした。
実際、もともとのブランドイメージから少し離れる商品もあったものの、新たな商品が完成した。売上自体は悪くは無かったが、販売現場からの反発は凄まじかった。今でも忘れないが、ある社員から、前オーナー(創業者)がいかにしてNYからブランドを持ってきたか、如何にこのブランドの価値を私が理解してないか、などの内容が書かれた長文の文章が届いた。売上施策は本部が考えるものではなく、各店の特徴を一番良く知っている店舗責任者を中心に組むべきだという主張であった。
というのも、同じ東京圏内においても、売れる時間帯、客単価、そして商品群など店舗によってその特徴が大きく異なる。例えば、ターミナル駅であれば、お土産需要として日持ち商品(焼菓子)の売上割合が大きくなるし、ベッドタウンに近い店舗であれば生菓子の割合が大きくなる。
社員の急激な変化への反発、権限を奪われることへの不満、などの表れでもあった。私も人間なので、こうした反発を受けて穏やかな気分では無かったが、 本部がすべてマネージするには確かに限界があるし、本部が決定するのではなく自発的な考え方を持つ社員を中期的に育てなければ、という想いもあったので、この主張を受け入れることにした。また、この時点では業績自体が回復していたため、社員の意識改革に時間をかける余裕がまだあった。親会社から迎えた開発者には再度離れてもらい、従来のやり方に戻すことにした。
 

OEM会社との折衝 

これは社内の販売部門、製造部門間で起こることだが、販売部門と製造部門は揉めることが多い。というのも、販売は「これが欲しい。なんでこんな品質の悪い商品を作るんだ。」という意見あり、製造は「無茶ばかり言って。そんなことできるか」といった具合である。製造販売の現場が近くにあって互いの状況が良く分かっている場合は、かける言葉等が変わってくるものだが、会社が異なると一層その溝は深くなる。
OEMの製造会社は、スタート当初よりは随分と落ちついてはきたものの、依然として商品クオリティのバラツキや、開発時点での折衝が上手くいかない等、問題は引きつづき起きていた。とはいえ、Q1を通してOEM側の収益としても当初想定していたよりは良かったようで、私とOEM会社の社長との関係は良好だった。私は製造部分の状況をもっと把握したかったし、販売側の意図も製造に伝えたかったという想いがあり、商品開発を強化するために親会社の菓子部門から人(Kさん)を融通してもらい、商品の品質を安定させるために自社で雇用していた製造スタッフ(Sさん)の計2名を、OEMの工場へ常駐させてもらうことにした。
2人にとっては精神的にかなり過酷な環境であったとは思う。しかし、製造に一切関わらない状況は今後の経営で非常に不安であったし、既存店売上向上のためには商品開発が必須であったことから、こうした判断をした。この効果はてき面で、商品開発については今まで「そんなの出来ない」で終わっていたことが、Kさんがレシピの提案や製造方法の提案を行うことが出来たり、先方の出来ない理由がより明確になったり等、コミュニケーションの円滑化に大きなプラスがあった。また、Sさんのおかげで、検品プロセスの再構築や衛生管理面の向上などが、実現できた。ただ、当然なことではあるが、先方の社員や社長含め、当社の人間が工場に常にいる状況は芳しくなく、しばしば人間関係でのトラブルは起きた。
 
コスト削減と違って、売上は簡単には上がらない。売上向上のために何が一番重要か、なぜ既存店売上が下がっているか、はっきりとした答えをまだまだ見つけられずにいた。
(C)2016 daikimatcha
 
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