日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

MBA留学➀ ~バブソンMBAの特徴(前編)~

バブソンMBAは、Financial TimesやUS Newsで、Entrepreneurship(起業)分野で世界一を取り続けている学校である。有名な卒業生の経営者でいうと、トヨタ自動車の豊田社長、イオンの岡田社長、佐藤製薬の佐藤社長などがいる。その他にも多くの経営者/起業家が活躍されている。バブソンMBAの特徴を伝えられたらと思う。 

生徒構成

バブソンMBAは、1学年150名程度の小規模なコースである。また、アメリカ人以外の国籍の生徒が60~70%を占めている。多いのはインド人、メキシコ人、タイ人といった順位で、日本人は毎年4名程。
何よりも特徴的なのは、ファミリービジネス出身者、次期経営者の割合の高さである。南米や東南アジア等、大企業の多くがファミリービジネスからなる国々は多数ある。そういった国々から、次期経営者としてやってきている生徒が全体の約4割~5割程を占める。企業への就職活動をしている生徒は半分以下と少なく、生徒の多くがファミリービジネスへ経営者として戻ることを想定した準備や、新規事業を行うための起業準備を行っている。1つ上の日本人の先輩も、現在CEOとして外国人とチームを組み、Crowdfunding を目下実施中である(Teplo社)。 
 
生徒間の競争(就職競争)という意識があまりないので、協調的でそれぞれが他生徒の成功を応援するという校風だ。
アメリカ東海岸には他にも多くのビジネススクールがあるが、生徒は起業ではなく一流企業への就職を目標としている、という点でバブソンとは大きく異なる。
 
私自身は、グローバルな環境で多様なバックグラウンドを持った人と仕事をする方法や経験を持ちたっかたこと、グローバルに経営者として同じ視点を持てる友人が欲しかったことからバブソンへの留学を決意した。過去にコンサルタントとして、製菓会社の経営者として、経営ということに触れる機会はあったが、グローバルな人材をマネージする経験やそういった人たちと交流を持つ機会はなかった。バブソンMBAが提供するダイバーシティな環境はなかなか他にはないのではないかと思う。
 

授業の特徴

起業家をテーマにしたケースや授業の量が圧倒的に多いこと、ダイバーシティを重んじたグループワークの量が多いことが大きな特徴である。
 

■Entrepreneurship(起業家精神)

まずEntrepreneurshipという授業が最初にあり、ここでは全生徒が3分間のビジネスアイデアのプレゼンをしたり、校外でプロトタイプを試したり、教室内でプロトタイプのコンペをしたり、当該アイデアのフィージビリティスタディが期末試験代わりだったりと、極めて実践的だ。私の場合、留学前から温めていた抹茶ビジネスのプランをチームメンバーと共に行い、アメリカ市場やグローバルカスタマーのニーズ調査を授業の中で行った。
また、授業で取り上げられるビジネスケースのうち、起業家に関するケースの数が多く、その質は非常に高い。スタートアップから10億円、100億円と規模が大きくなるにつれて起こる資金繰りや人材難等の問題から、ある一定の規模になった時に経営者として、成長か、従業員の幸せか、自身の生活か、人生の優先順位に関する判断を決断を迫られる場面など、リアリティーのあるケースが多い。また、ケースの当事者である起業家が授業に登場し、質問をぶつけることができるのもおもしろい。
 

■グループワーク

グループワークは、文化、働き方の違い、価値感の違いなどにぶつかる貴重な経験ができる。1年に2回のチーム編成があり、半年間は同じチームで課題をこなす。チームで、5ドルを元手にビジネスアイデアを考えたり、24時間耐久のレポート課題をやったり、差別やダイバーシティについて議論したりと、様々な角度からの協調を求められる。
最初のチームは、インド人2人、タイ人1人、コロンビア1人、アルゼンチン人1人、日本人(私)の計6人構成で、2回目のチームは、インド人2人、アメリカ人2人、日本人(私)の計5人の構成だった。
最初のチームでは、時間が全く守られないといったことから(約束の1時間後に皆が集まったり)、もの凄い勢いで全員が喋ったり・・(とにかく自分を主張することが是とされる環境の国もある)。
最初はどう貢献するか困ったが、このとき役立ったのはコンサル時代に培ったロジカルに整理する力だった。目的を捉え、作成したフレームワークを基に整理し議論するというのは、価値観や考え方の違いが多様な環境では特に威力を発揮する。2つ目のチームになると、生徒はダイバーシティに富んだ環境を経験したことで成長し、ワークがとても効率的になっていく。話を聞くようになるし、ワークロードや分担、それぞれの強みを活かすといったチームワーキングスタイルになっていくのが興味深かった。
 
このグループワークからの気づきのひとつは、ダイバーシティ―な環境になっても、チームをマネージする本質は変わらないということだ。
国籍問わず、仕切るのがうまい人はそれを強みに、数字に強い人はそれを強みとしてチームに貢献する(国によって数字に弱い強い、などはあるが)。
個々の強みを引きだし、生かすことが円滑なチーム運営に欠かせない。
話が冗長的な人は良く聞いて意図をくみ取る、他の生徒の出方を予想して先回りして情報収集や予習をしておく、日本にいても変わらない。
最初はストレスに感じることも多かったが、今となってはこのチームワークが何よりも大きな学びと思う。

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