日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

経営再建⑤ ~コスト削減(前編)~

最初の3か月は想定どおり計画が進み、1Qは黒字で終えることができた。旧会社の前期業績と比べると驚くほどのV字回復だった。
その後、予想だにしない急展開と業績の急落下を迎えることは先に記載しておく。
今回から数回は、コスト削減など想定どおりうまくいった経営再建の施策を記載する。 

物流費の削減

経営計画のなかのコスト削減項目のうち、物流費削減は重要な柱のひとつだった。
物流費が売上高比率の10%以上と高止まりしていた。

当然だがコスト削減において「値下げしてくださいよ」という短絡的な交渉で値段など下がるわけもない。
相手の業界の根付けの仕方や収益構造をある程度理解したうえで、弊社も相手も得をするような枠組みを考え、提案しながら実現化することが必須だということだ。 
そのためには、取引先のビジネスの仕組みを勉強し理解したうえで、既存の取引のやり方に対して疑問を抱く姿勢が必要となる。

商品運搬用のラックを変更

当該製菓会社の場合、物流費用の高さの原因は、トラック単価の高さ、トラックの稼働率の低さにあった。
トラックの値段は、たいていサイズと機能で決められており、トラックの種類で大きく値段が異なる。
当時、製菓会社では、4tパワーリフト付きトラックという単価の高いトラックを2台活用して納品を行っていた。
当該製菓会社は、製品をトレーにの載せ、1.5m~2m程ある鉄製のラックにトレーを納品し、ラックを各店に配送、各店の空トレーを載せたラックと交換して工場へ、といった物流の流れを取っており、
そのために大型でパワーリフト付きのトラックが必要だった。

私は「そもそもなんでこのラックが必要なのか」とこのラック納品に大きな疑問を持った。既存のものごとに疑問を問いかけるのは、コンサル時代に培われた癖だと思う。
ラック納品ではなく、他の菓子屋やパン屋のように番重(菓子を入れる箱)での納品ができればトラックを選ばないため、大きく費用が異なる。

社内でその話をすると、「①トレーにあった番重はない」「②製造工程で1手間増えるため受け入れて貰えない」「③店舗ではラックにトレーを納品した状態でないと開店オペレーションを圧迫する」といった、出来ない理由ばかりが次々と挙がってくる。ひとつずつ解決していくことにした。

①について、番重メーカに自ら電話して聞いたところ、食品用では確かにサイズにあった番重は存在しない。特注だと膨大な費用がかかる。しかし、粘り強く話を進めるうちに、別の手段が見えてきた。
工業用の部品を納めるプラスチックトレーなら、という話になり、早速試用してみることにした。実際使ってみると全く問題なく、番重自体は若干高いが、1カ月分の配送料の差額で十分payできる投資だった。

②製造時の手間については、当時の製造委託会社の社長が、快く協力をして下さった。過去当該社長が、経営再建をしたときに物流費が大きなネックだったという共通点もあり、大変共感して下さった。
③店舗納品については、新規の物流会社さんで、当該作業を引き受けてくれる会社を探すことで解決した。

トラック稼働率の向上 

トラック稼働率の低さの原因のひとつは 小規模納品の卸先が多いことにあった。
10個未満/日にも関わらず、毎日納品しているカフェなどの卸先が多数存在していたため、トラックのうち1台はこうした先をメインに回り、トラック搭載率が低くなっていた。物流費のほうが限界利益を上回る顧客が多かった。
大変心苦しかったが、どれだけ小さい卸先様にも直接私が訪問し、理由を説明したうえで、今後商品が小ロットでは提供できない旨を説明し、納得して頂いた。 


こうした変更によって、トラックサイズを物流に合わせて変更できるようになったことは、物流費の削減と、物流費の一部変動化につながった。
後に訪れる急激な売上高低下の際に大いに役立つのだが、このときは知る由もない。

 

(C)2016 daikimatcha

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