日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

MBA留学③ ~ITビジネス~

アメリカ留学で得た重要な収穫のひとつは、アメリカのビジネス・サービス・市場について、生活の中で触れることができることだ。
次々とITビジネスが新たに生まれ、それが瞬く間にアメリカ以外の国へと進出してGlobal Standardとなっていく。
有名すぎる例だが、改めてUberとairBnBについて紹介するとともに、アメリカ発のサービスが成長する理由について触れたい。

Uber

個人が所有している車をシェアするという発想の元、乗客が気軽にハイヤーを利用するためのPlat formを提供しているのがUberである。
アメリカに来る前は、日本進出するということで、名前だけ知っている程度だった。現在ではtaxi以上に良く使用している。というか、taxiを全く使用する気にならない。このサービスに押されてアメリカではタクシー会社が破産に追い込まれている。
Uberの利用方法は非常にシンプルだ。利用者は、自分が乗りたい場所、降りたい場所をGoogle mapと連携したアプリで指定すればよいだけで利便性に優れている。予めクレジットカードを登録しておくので、降車時の支払も必要ないし、チップもいらない。自分のドライバーがどこにいて、何分で来るのか、地図上でわかる。boston郊外に住んでいるが、それでも5分~10分くらいで迎えに来てくれる。
 
Uberの何よりの肝はratingだ。 ドライバーと乗客が互いに相手を5点満点で評価する。
4.5点以下になったドライバーは一定期間にサービスに参加できない。逆に素行の悪い乗客はドライバーから拒否されるのでサービスを使用できない。シンプルだが、それが故に双方ちゃんとする。
一度、Uberを予約したにもかかわらずドライバーが迎えに来ず、しかもドライバーから架空の請求が送られてきたことがあった。Uberにクレームを言うと、すぐにシステム上で返金がなされ、丁重なお詫びの連絡が来た。対応の早さと丁寧さに舌を巻いた。
 
Uberの車は綺麗だ(ここではToyota Camry率が異様に高い、中にはベンツ、レクサスのことも)。車内は臭いに気を配り芳香剤が。中には、サービスとしてペットボトルの水をタダでくれたりする場合すらある。評価されるという仕組みが、個々のドライバーの工夫を生む。
フレキシブルな働き方ができるとあって、ドライバーの数も増えているようだ。ここ数か月でまだドライバーを始めたばかり(数か月、数週間)という人が何回かいた。フルタイムでドライバーとして働いている人もいれば、リタイアして時間が有り余っているから始めた、子育ての空いている時間だけ働いている、という人もいる。
 
Uberがアメリカだけでなく世界中で利用されている。特に南米ではStandardになっているようで、コロンビアの友人は"Uber is always better than taxi"といっていた。安全に旅行したいなら、Uberを使用した方が、良いと。
もちろん、Uberも、 GMが出資し車両を提供することとなったLyftや東南アジアでは、シンガポール発でSoftbankが出資するGrabなどと競争しているが。
 
日本では規制やらがあるので、羽田成田の空港とごく一部の都心だけだが、、日本のニュース記事を見る限りでは、安全面からUberに批判的な意見が多数あるという。もちろん、ドライバーの素性、保険への加入など、 Uberを利用することのリスクはゼロではない。しかし、それは何のサービスでも同じだ。リスクに見合う、もしくはそれ以上のリターンがあるかどうか、を適切に評価する必要があるのではないか。 
 

airbnb 

airbnbは、Uberの家バージョン。自宅の空いている部屋を人に貸して有効利用したい貸し手と、宿泊者をつなぐサービスだ。
私もMBA2年目は、ボストン市内の部屋をairbnbを使用して3カ月間予約してある。安いし、家具など用意しなくて良いので留学生・ビジネスマンにとって余計なイニシャルコストがかからずに持ってこいである。
 
こちらも同じくratingが肝で、旅行者側もホスト側も双方が互いにratingし合う。
宿泊ということもあって互いの相性がより重要となってくる。ホスト側はパスポート等の身分確認も行うし、プロフィールを見て気が進まなければ、宿泊依頼を拒否することができる。
事前にキッチンの使用ルールなど細かいことをメールで確認できるし、現地への訪問・下見もできるので、利用者の希望を確認し易い配慮がなされている。
 
日本でも、急激な外国人旅行客の増加からairbnbがニュースなどでも最近良く取り上げられている。
日本の場合、旅館や民宿を保護するという名目のもと、6日以上でないとairbnbが使用できない、というルールになっているのは驚きだ。確かに近隣住民からの苦情等考慮しなければならない点も多いが、政府が訪日観光客増加に力を入れ、物理的に宿泊施設を急激に増やすことができない以上、民泊ビジネスは慎重な法整備と共にますます広まっていくことになるだろう。
 

アメリカ発のサービスが広まる理由

Uberもairbnbも設立後、まだ大した期間もたっていないが、既に世界中で使用されるplat formとなっている。その理由はどこにあるのか。
 
まず第一に、アメリカ自体が人種・文化が入り混じるグローバルな環境なので、そこで生まれて・揉まれる中で、世界標準にできるサービスが最初の時点からできる。しかも、アメリカ自体が世界一の巨大な市場だ。日本のようにまず、サービスを日本というそこそこ大きい独自市場の中で創り上げ、さあ、海外だ、とった速度とは比べ物にならない。
 
アメリカは多数の優秀な移民が集まる人種のるつぼだ。シリコンバレーに集まる優秀な資金に加えて、優秀な人材という有機的なリソースも相まって、サービスやビジネス基盤に磨きがかかる。ある程度成功が見えると、様々な投資家がお金を入れ、時に他のベンチャーと協働しながら、一気に広がっていく。
 
それに加えて、アメリカは日本と比較して、州政府の力が強い。そのため、法規制においても州ごとにかなり異なる(例えば大麻OKの州があったりするように)。
アメリカ全体で法整備のコンセンサスを取ると非常に時間がかかるが、アメリカの場合、一部の柔軟な州で法規制をクリアし、その州内でtry and errorを繰り返すことで、より現実的なサービスの改善や法整備の経験値を培っていくことができる。日本のように、小さなリスクすらしっかり懸念しながら、、という手法では到底速度が追いつかない。
 
ITサービスの世界では、アメリカは本当に強い。こうしたアメリカの強みを知るほど、日本人として彼らに勝てる部分は何処か、という視点で物事を考えるようになった。
彼らの生みだす素晴らしい仕組みを利用しながら、食や観光サービスといった日本人としての価値(正確さ、緻密さ・繊細さ、サービスレベル、歴史/文化)で世界と闘っていきたいと考えている。 

(C)2016 daikimatcha

 

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