日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

MBA留学④ ~アメリカでの日本食~

アメリカに来て驚いたのは、日本食が一過性のブームでは無く、1つのジャンルとして成長を続けていることだ。寿司だけでなく、ラーメン、焼き肉、焼き鳥、居酒屋、定食など、日本食の裾野がますます広がっている。
また、スーパーなどのラインナップ拡充から考えても、アメリカ人の食卓においても、日本食はより親しみ深いものとなっているようだ。概して本当の日本食(出汁ベースであっさりとした。いわば京料理に近い)よりも、日本食の中でもジャンクな味の濃いもの(ラーメンなど)が特に受けている印象だ。
また、大学にきているアジア圏の学生(中国人、タイ人、ベトナム人等)は日本食が本当に好きで、中には美味しい日本食を食べるべく日本の地方にまで観光に行っている人も。計5回以上も訪日している人もしばしば見かける。

人気のあるレストランカテゴリーなど 

~ラーメン~ 

らーめんは、非常に人気がある。日本のチェーンだと、ニューヨークには「一風堂」、ボストンには「山頭火」・「夢を語れ」、など日本資本で日本人が働く本格ラーメン屋さんがあり、どこも毎日行列である。ラーメン1杯20ドル弱(2000円弱)するのは日本人にとっては驚きだ。特に一風堂は、お洒落な居酒屋のようなイメージで、お酒やおつまみと一緒に長時間友人や家族と食事をするような感覚で使用されている。アメリカ人は熱いスープをすすることに慣れていないし、他の料理と同じく、友人と会話を楽しみながらいただくものなのだ。日本のようにカウンターでさくっと食べてすぐに出るといったファストフード的な使用のされ方では無い。
アメリカの食事と比較した場合、日本食はあっさりとしていて、ヘルシーだ。もしくは日本食=ヘルシーという認識がなされているようだ。そのため、日本食の中でこってりとしていたり、味がしっかりしている料理もアメリカ人にとっては”あっさり・ヘルシー”と認識されて人気がある。上記に挙げたラーメン屋さんの味は日本とも変わらず、本当に美味しく、ホームシック(日本の味への)を幾度となく癒してくれた。
水の違い、小麦の違いから麺を作るのに苦労されたり、スープに使用する材料を空輸されたりと、数多くの困難を乗り越えて、この人気とクオリティを実現されているラーメン屋さんには脱帽だ。ニューヨークは上記以外にも数多くの日本人オーナーがラーメン屋を経営されている。
 

~Japanese BBQ(牛角)~ 

「日本食で御勧めある?」と良く外国人に聞かれるのだが、そういう時に紹介して外れなく反応が良いのが牛角だ。ボストンにも二軒あり、中国人やインド人、南米人、アメリカ人、どの国籍の人にも好評だった。
アメリカのスーパーやレストランでは、日本の焼き肉のように肉を薄く切って食べる習慣はあまりない。また、自分で焼いて食べる、というスタイルが珍しくて刺さっているのと、味付けや価値が分かり易いのが好評の理由だと思われる。
あくまで個人的な感覚だが、現在の日本の牛角で出される肉よりも質が高く、他と比較して安い。アメリカ産の牛肉が日本よりも物流コストの分だけ安く、しかも新鮮に手に入るのだから納得だ。ランチだと12ドルで肉が3種類、ごはん、味噌汁付。他と比較した場合、アメリカではランチでこのボリュームだと20ドルは軽く超えそうな感覚である。  
 

~スーパーでの日本食~

私がボストンに住んでからわずか半年の間で近隣にあるスーパーの日本食コーナーが拡大された。今では、うどん、そば、のり、わさび、インスタント麺(複数銘柄)、アメリカ産日本米、パン粉等、半年前は日系スーパーまで行かないと手に入らなかった産物が近所のボストン郊外のスーパーでも手に入るようになった。
また、H-martという韓国系の日本や韓国の食品を取り扱うアジア系スーパーや、えびす屋という日系スーパーにおいても、日本人以外のアメリカ人や中国人を数多く見かける。(むしろ日本人の方が少ない。ボストンの人口から見れば日本人の割合はごく少数だから当然と言えばそうだ) 
 

日本食の市場推移 

世界で大きく伸びているが、多くは中国人や韓国人によって経営されている。どちらも食べたことがあるが、現時点では、やはり日本人オーナーの店との味の差は歴然である。
中国人、韓国人は何処で修行を重ねているのかと聞いてみると、寿司について言えば、ニューヨークに寿司スクールがあり、1年程度で一通りの技術を教わることができるそうだ。そこで習った技術をベースにオーナーシェフの独創的な新メニューが生まれていく。
例えば、アボガドと寿司を合わせたり、天ぷらと寿司を合わせたり、などなど。それはそれなりに美味しいが日本人からすれば日本食とは別物だ(しかし、アメリカの人たちにとってのSUSHIはこっちが主流なのだ)。そうした外国人オーナーシェフの元でまた新たに修行を積み、寿司のシェフになる人もいるようだ。
さらに、近年の日本食ブームもあり、元々韓国料理や中華料理を提供していたレストランが、日本料理に変わっているというケースも多い。食材卸から日本の主だったメーカーの調味料等は購入できるということだった。 
 
日本食が外国人の手で広められ、なんちゃって日本食が広まっていくのを見るのは複雑な気持ちになることもあるが、彼らのおかげで日本食が世界的の人たちに愛されるカテゴリとして成長したのは事実だ。外に目を向けない日本人の代わりに、彼らが頑張ってくれている、という見方もできなくはない。 
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