日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

経営再建⑪ ~想定外の新規出店(前編)~

国税からの差押え通知書により、引き継いだ店舗のうち、赤字店の1つを除く全てが契約解除、という予想だにしない状況となった。
このときの私の頭の中には、雇用を維持するために、売上規模を保つために、新規出店をしなければならない、という考えしかなかった。
海外のブランドが時に実施するような一端日本から完全撤退、もしくは規模縮小して立て直した後、改めて出店、という方法は全く検討しなかった。
せっかく旧会社から引き継いだモチベーションの高い社員・人材を失いたくないということと、社員の雇用を守らねばならない、という責任感のようなものを強く感じていたからだ。雇用をまもるために無理に出店した、という見方もできる。今ならもう少し違う方法を取るかもしれない。
 

新規出店の営業・ブランド価値 

幸いにして、当社は、過去にかなりの数の百貨店や駅、サービスエリアなどで催事販売(期間限定の販売)を実施しており、主要なほとんどの会社の担当者とコンタクトがあった。直ぐに販売責任者のSさんに連絡をしてもらい、商談の機会を持つことができた。
以前にIT会社(親会社)の製菓部門にいた時の私の経験からして、催事販売を行うことは簡単だが、そこから常設店オープンの交渉をするのは大変に難しいことを知っていた。よっぽどの実績を挙げていないと、常設店をオープンするという交渉は進まない。当社が比較的すんなりと常設店オープンの交渉を進められたことには心から驚いた。このブランドの持つ過去の実績・ブランド力というものを感じた。BS(貸借対照表)が示すとおり、のれん(ブランド価値)が当該会社の大きな資産だと改めて感じた瞬間だった。
 

デベロッパーとの関係  

この頃は、路面店での出店は一切考えず、テナントとして百貨店や駅に出店することを考えていた。
テナントとして出店する場合、多くは賃料が売上歩合となっている。(場合によっては最低保証といって、どれだけ売上が落ちてもテナント側が負担する固定賃料の部分)そのため、デベロッパー側は定期的に売上の低いテナントの入替を行っており、特にターミナル駅や人気の百貨店などではそのサイクルも短くなっている。
超一級の立地では、常設店でも1年契約の場合も多く、坪売上高がデベロッパー側の予算に満たなければ契約延長は無い。超一級立地は、非常に多くのテナントが出店を狙っているため、このような単年契約というディベロッパーに有利な条件でも契約が成立するのだ。
 
もちろんテナント出店することにはメリット・デメリットがある。
テナントとして出店する場合、営業時間、店舗の装飾、看板の置き方など百貨店や駅が持つ規則・ルールを遵守する必要がある。また、売上歩合で賃料が決まるため、「売り切れの状態を作らないように」、というデベロッパーからの要求は厳しい。
テナント側としては、ロス率が収益に響くこと、精神的にも一生懸命作ったものを無駄にしたくない無い、という気持ちも強いが、こちらの主張は売上が予算を大きく上回っている場合を除いて、受け入れて貰えない。さらに、店舗物件のスペックによっては、保健所の許可が「物販販売」しか取れずドリンク販売などができず、販売戦略の幅が狭まることもある。つまりは、テナント出店は比較的、自由度が低い。
一方で、百貨店や駅などが、集客施策を箱全体で実施してくれたり、マナー研修を実施してくれたりと、メリットも大きい。 

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