日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

経営再建⑰ ~工場移転(前編)~

苦悩

夏場の施策

新規店舗は上手くいかず、裁判にも追われ、元々製菓が売れ辛い夏季に突入したということもあり、この時期は本当にシンドイ時期だった。店舗展開をして気づくのだが、打つ手が無いのである。新規施策をどんどん打ってそのPDCAを廻すという方法が、店の設計上新規施策の実行ができないのである。例えば、駅ナカの持ち帰り店だと、お店の構造上、飲み物の取り扱いができない、、暑い夏に製菓しか売れないのでは難しい。。それでも、中には新規投資により、軽飲食の許可が取得できる店が一部あった。

ドリンクの販売ができるお店は全て変更し、夏限定のドリンクメニューを。カフェが併設しているお店では、ドリンクメニューの拡充と、冷たい製菓などの販売をして、底上げを図った。

根本的な解決

しかし、元々のベース売上が下がっているので、夏の施策も、濡れ手に粟の状態だった。どんどんなくなるキャッシュ。。。

この事業を始めた当初から感じていた若干の違和感を改め感じた。売上施策のための商品開発、商品の改良がOEMというスキームにより、一切封じられているのである。そもそも、高価格帯で商品の品質が高いことが当該ブランドの強みなのに、材料の質向上もOEMとの交渉でままならない。NYは深夜に製造して早朝配送を行っていたこともあり、より新鮮な状態で商品を届るべく深夜製造をOEMに提案しても、、、OEM側としても、大量発注していた弊社の旧店舗が無くなったことで製造売上が急激に下がり、固定費削減を実施していた。そういった状況で品質をより上げる施策、というのは無理な相談だったのだと思う。すべてが悪い方向へと向かっていた。

やはり、商売の本質はリピーターの獲得が必須で、高品質ブランドである以上、その商品の品質に私自身が深く関与し、最高の状態の商品をお届けしないといけない、と強く心に決めた。 

OEM先からの申し出

契約解消の申し入れ

製造に関してより強く考えていた最中、OEM会社の社長から会いたいとの連絡が入った。通例は、私が工場の様子を見がてら、先方を訪れるのが常であったが、今回は「是非お伺いしたい」とのことだった。当然、ある程度話は予測された。

「OEMを辞めさせて欲しい。」との申し出だった。

詳しい状況などの話を進めると、弊社同様、当初の混乱こそあったもののある程度売上ボリュームのあった最初の3カ月は想像以上の利益がでていた。とのことだった。しかし、旧店舗が無くなり売上ボリュームが減少していく中で、部門は赤字転落。先方も台所事情が決してゆとりがあるわけでは無い状況の中で、銀行を始めとするステークホルダーを納得させらない、とのこと。

想像はしていたことだし、本来的にいうと自社製造ということは再起に必須ではあるが、想定よりも急であったし、幾つもの課題が頭に浮かんだ。 

移転に当たる課題 

移転に当たって考えなくてはならないのは、自社製造か新たなOEM先を見つけるか、ということである。

商品の質向上などのメリットを考えると、自社製造だが、弊社が抱える製造スタッフはわずか2名。合計5店舗を支えるには10名以上は必要である。

限られた時間で、8名を新規採用して製造ラインを動かすことはできるのか? 

また、弊社の製品は、生鮮品である弊社商品を毎日欠かさず店舗に運営していく必要がある。さらには、卸先のお客様もいる。 

さらに、重量の大きな生産設備を運送すると、運送費をかなり要する。そのお金はどうするか。 

そもそも、工場は何処にするのがベターか?、OEM先は見つかるのか? 

OEM契約の終わりが決まった中、数々の超えなければいけないハードルがあった。 

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(C)2016 daikimatcha  

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