日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

経営再建② ~社長になるまで(後編)~

(※旧会社:もともと当該製菓会社を運営していた会社)
(※新会社:新設分割により新しく設立し、我々が買収することになる対象会社)
 

旧会社側との交渉

コンペに参加し、買収に際しての諸条件を詰めていく段階に入っていった。

早速、旧会社の社長、役員、そして主要株主との交渉が始まった。

旧会社側がわれわれに求めてきた条件は、従業員の未払い給与(2月分)の引き継ぎ、NYへの未払いロイヤルティの引き継ぎ、現場社員の可能な限りの雇用継続、そして数千万円という買収価格が主だった。

買収価格並びに運転資金も考えると億単位の資金が必要となり、VCの参加が必要最低条件だった。
買収先と同様にVCとの交渉も継続して実施していくことになる。
 

VC側の条件

まず、方向が決まったのはVC。投資委員会の正式な決定はdeal直前だが、内内の承諾を事前に取りつけることができるという。
新設会社の株式を、IT会社が過半を取るという枠組みにおいて、VC側が提示した条件は、①IT会社がいかなる協力もおしまず行うこと ②VCが購入する新設会社の社債をIT会社が保証すること ③私が代表取締役になること が主な条件だった。
その他、株式や社債返還に関する様々な条項があったがここでは割愛する。
 
最初にこの条件を聞いた時の率直な印象は、凄い機会が来たというポジティブなものと、このハイリスクな案件は大丈夫だろうか、という両方が入り混じった複雑なものだった。
 
IT会社のI社長は、本当に器の大きい方で、このリスクを私に代表取締役として負わせるのは大きすぎるから、ご自身が代表取締役会長となられ、私が取締役社長、となる提案をして下さり、結果そのような体制がVCにも受理され、VCの参加が事実上、内諾されたような状況になった。 
 
旧会社側も、VCという資金の出所が確実な我々IT会社陣営を優先的な買収相手として選んだ。
我々側も10月一杯運営する中で、①店舗契約が新会社に移行すること  ②NYと新会社との契約が締結できること ③別会社に譲渡される製造部門が機能すること ④その他開示された情報と異なる事実が発生しないこと がクリアされた場合、最終的に買収金額を振込dealを完了させることで合意した。 
 

チャンスを与えられる、ということ

私はこの時期を振り返るとき、いつも思う。
私にはI社長のように「26歳の若輩者に任せてみよう」と思える度量があるだろうか。
人に任せるというのは、簡単なようで非常に難しい。自分が経営者となったのち身に染みて思う。
でも、もしこの案件を任せてもらえていなかったら、私の人生は全く違ったものになっていただろう。
 
I社長は「自分も若いころ、同じように経営の経験を積みたかった。でも自分にはそういったチャンスを与えてくれる人も機会もなかった。だから、きみに任せるよ。」と言っていた。
I社長の懐の大きさに感謝している。
 
翌月2012年10月から、私は次期社長として、会社本部に常駐へし、社員との顔合わせや、店舗契約の移行、NYとの新規契約の締結などを実施していくことなる。
 
(C)2016 daikimatcha
 
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