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日本の農業で世界へ~起業の記録~

京都大学農学部卒業、外資戦略コンサル、ITベンチャー役員を経て、製菓会社の社長として経営再建を経験。現在、米国バブソンMBA留学中、2016年6月D-matcha株式会社(https://dmatcha.jp/)を設立。

経営再建⑧ ~既存店売上施策(後編)~

日本とNYの違い

旧会社で冷え切っていたNYとの関係だったが、あのNYで食べた味を再現したいと想いもあり、頻繁に私は連絡を取っていた。NYと日本の違いを見てみると、製造面では製造の時間・材料の問題、販売面では消費者の食習慣の違い・商品種類などがあった。
 
特に問題だったのが製造面だ。NYでは24時間製造を行っているため、商品を製造してから店舗に並ぶ時間、売りきる時間が半日以内であった。対して日本では、当時、前日製造翌日配送を行っていたため、店舗に並ぶのに製造から時間が経ってしまっている状況だった。生菓子なので鮮度は極めて重要な要素であったため、OEM会社に対して深夜製造の交渉を何回か行ったが、OEM会社としては弊社の製造以外も行っているわけで、社員の希望などから考えてみても、深夜製造への移行交渉は一歩も前に進まなかった。
 
また、材料面について、アメリカで手に入る材料と日本で手に入る材料の違いがあった。小麦の種類等はある程度仕方ないのだが、最も大きかったのはバターである。
当時(今もだが)、世界では安くて簡単に何処でも手に入るバターだが、日本では酪農保護という名の元、バターの輸入制限や国内生産の不足から「バターが買えない」という状況が頻繁に起きていた。
バターは商品の「コク」を出す上で必須な材料であるが、買えない、という状況が続いたため、日本側がレシピをバターを使用しないものへと変更していたのだった。さらにNYは年々進化をしていて製造方法や材料などのアップグレードを行っていたが、日本はかなり昔のまま止まっている、というのも大きな差だった。そうした現状をOEM会社と話たりもしたが、材料コストの向上等が理由で、製造方法を変えることはできなかった。
 
また、販売面での違いは、アメリカと日本では消費者の習慣の違いがある。アメリカでは菓子を「自分買い」するのが多いのに対し、日本は菓子を「ギフト」として購入するケースが多い。NYと会話しても、この点は一向に理解されず「NYと同じことをすれば絶対売上は上がるから、そうしろ」の一点張りだった。
NYのオーナーは自ら職人であり、商品の拘り、ブランドへの拘り、経営者としての人格(これは後に仲良くなってから感じたことだが)も素晴らしい経営者だ。しかし、今となっても、各拠点ごとの売上施策については意見が異なる。やはりマーケットごとにお客様は異なり、どれだけ実績があって優秀でも、そこに住んでない人間がお客様の細かいニーズまで理解することは難しいのだと思う。ある程度の部分は、各拠点に自由度を持たせて「考えさせて判断させる」という経営にしていかないとお客様の細かなニーズの変化に対応することはできない。任せるところは任せ、握るところは握る、そのバランスが重要だ。NYとのFC契約時に、日本での経営の自由度を認めてもらう一文を、強く交渉して盛り込んておいて良かった、改めてと思った。
 

商品カテゴリーの多さ

日本とNYの対比や売上のデータを見て気になったのが、日本での商品カテゴリーの多さである。NYは、生菓子が殆どの売上割合を占めるのに対し、日本は焼菓子など売上の構成比率はロングテールになっていた。この時私は、「効率」を重視した判断を取り、売上比率の低い焼き菓子の製造をどんどん止めていった。その方が、より主力である生菓子にお客様の目もいくし、製造側も販売側も生菓子に集中できるので効率が上がるだろう、と考えてたからだ。しかし、これは間違いだった。
いろいろな失敗のあとだから言えることだが、製菓は嗜好品なので、「お客様に如何に来店のきっかけを作るか」が重要だ。売上比率の低い商品にも実はコアなファンがいて、その方がついでに生菓子を勝っていたりする。例えば、お土産用に焼き菓子3箱と生菓子4個を家族用に、など。特に日持ち商品は、ターミナル駅において他の競合が余りいない、という状況でもあったため、売上比率と製造の効率性だけで商品を止めてしまったのは大きな間違いだった。その後、現場での経験を経てそれに気づいたとき、比較的売上比率の高かった商品については直ぐに復活させた。
 
その商品自体の売上自体は小さくとも、その商品がきっかけとなり、ほかの商品のついで買い、まとめ買いにつながっていることがある。データを表面的に見てジャッジしてはならない。視察だけでなく、定期的に店舗に入るなど現場でのお客様の行動を具に観察し、データの裏にある現象を理解しないと、正しい判断は難しい。
(C)2016 daikimatcha
 
 
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